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ウイルスってなに? ~殺菌、抗菌、除菌、滅菌 その2~

清掃業界でよく見る、殺菌、抗菌、除菌、滅菌。それぞれに違いがあることをご存じでしょうか。このコラムでは、3回にわたり殺菌をテーマにした小文を掲載します。

「その1」では、一口に「菌」といっても、まったく違う種類の生物たちが含まれているということについてお伝えしました。今回の「その2」は、ウイルスについてのお話です。

ウイルス? ビールス?

2020年、新型コロナウイルス感染症が世界的な流行を見せはじめた時期には「コロナビールスを殺菌消毒」といった文字を見ることもありました。

現在ではウイルスという表記がほぼ完全に定着した感がありますが、以前にはウィルスのように小さい「ィ」の表記であったり、ビールス、ヴィールスといった医療関係者がよく使うドイツ語発音系の表記や、バイラスといった英語発音的な表記も入り混じっていました。今回の新型コロナウイルスのパンデミックが、ウイルスという表記を世間一般に定着させたように思えます。

 

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真
出典:国立感染症研究所ホームページ

ウイルスの種類

動物、植物、細菌など、ほぼすべての生物にその種固有に寄生するウイルスが存在します。ヒトに感染するウイルスだけでも400種以上見つかっています。ウイルスに寄生するウイルスまでいます。ですから、ありとあらゆる生物よりもウイルスは種類が多いということになります。

ヒトや動植物に病気を引き起こすのは、多くのウイルスのうちのごくごくわずかですが、とにかく構造が簡単なこともあって、多くの変異体を生み出しやすく、これまでヒトに病気を引き起こさなかったウイルスが新たな感染症の原因となるということも、まったくないというわけではないのです。

ウイルスが発見される前からVirus

Bacteria(バクテリア:細菌)は1828年に、ギリシア語で「小さな杖」を意味する言葉からラテン語に造語されました。それに対してVirusは、もともとラテン語にあった言葉で、粘液や毒といった意味の単語です。いま私たちがウイルスと呼んでいるものが発見され、どういう構造なのか判明する前から、Virusという言葉は使われていたのです。

 

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真

Collins Latin Dictionary and Grammarより

病原性の細菌によってさまざまな感染症が起きることが分かってきた19世紀の後半、いくつかの病気の病原体と思われるものが、細菌ろ過器を通過しても感染性を失わないことが発見されました。光学顕微鏡ではどうしても見つけることができなかったこれらを「filterable virus(ろ過性病原体)」と呼んだことが、ウイルスをウイルスと呼んだはじまりです。感染力を持つ液体と考えた学者もいれば、極めて小さな細菌だと考えた学者もいました。

1935年、ウェンデル・スタンリーがタバコモザイクウイルスの結晶化に成功し、その組成とともに、この結晶が感染する能力があることを明らかにしました。そして翌1936年、フレデリック・ボーデンらは、このウイルスがタンパク質と核酸からできていることを解明したのです。

ちなみに、この1930年代の時点では、遺伝情報を保持しているのが核酸(DNAまたはRNA)であるということは、まだ、完全に判明していたわけではありませんでした。

 

タバコモザイクウイルスの電子顕微鏡写真

タバコモザイクウイルスの電子顕微鏡写真
出典:Wikimedia Commons、撮影者:T. Moravec、パブリックドメイン

ウイルスは生きてるの?

ヒトを含む真核生物も、細菌などの原核生物も、DNAで遺伝情報を保持し、それを読みだす際にRNAを使いますから、DNAとRNAを両方もっています。でも、ウイルスはほとんどのものが、DNAかRNAのどちらかしかありません。

DNAまたはRNAのまわりをタンパク質が囲ってる。ウイルスを簡単にいうと、これだけの存在です。エンベロープと呼ばれる膜をかぶっているものもいますが、細胞膜も細胞質もありません。自分でエネルギーを作ることができず、自分で増殖もできません。他の生物の細胞に寄生し、そこで必要なエネルギーやタンパク質を得ることで、はじめて増殖することができるのです。

このような存在ですから、現在の生物学の主流の考え方では、ウイルスは生物ではありません。生物ではありませんから、生きているとは言い難いです。生きているとは言い難いですから、殺すこともできないわけです。感染対策を謳う洗剤などのラベルをよく見ると、「コロナウイルス失活」と書かれていたりします。「失活」って何でしょう? 辞書を見ると「化学物質などの活性が失われ、反応を起こさなくなること。不活性化。」などとあります。つまり、活動しなくなり、感染もしなくなるということですね。

最後に

今回のコラムはウイルスについてでした。次回は、ウイルスの失活や菌、抗菌、除菌、滅菌についてのお話です。前回の「その1」はこちらからご覧ください。

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